感動は心を掘り起こす

園長 小林直己

いま、幼稚園では運動会を通して子どもたちに感動を与えたいと思い日々取り組んでいます。子どもたち全員そろって運動会に参加して「やってよかった。うれしかった。」という気持ちを持たせたいと思っています。

 テレビを通して高橋尚子選手がベルリンマラソン大会で世界新記録。長嶋監督の退任。イチロウ選手の快挙。などなどの活躍に感動をいつぱいいただき素晴らしい一日でした。

感動は人の心を変えていきます。私が数学の研究をしているとき教育大学(現筑波教育大学名誉教授)の故和田信義先生が「小林君数学は感動だよ」とおっしゃったことがあります。人を育てるということはまさに感動をいかに与えることだと、子どもとの関わりの中で身をもって体験したことを思い出しました。

私は選手が一位になったり新記録を作ることはすばらしいことであり称賛に値し感動しましたが、もっと感動したことはその選手のさりげないコメントや努力している過程の中での言葉でした。また、監督が選手に語りかけるさりげない言葉が、その選手の能力を掘り起こし磨きをかけその気にさせています。監督の情熱と人間性に触れとても心地よさを感じました。

 各家庭でもいずれかの選手について会話が交わされ歓声に湧いたことと思います。感動は素晴らしい方向へ人の心を向かわせてくれます。こういう言葉があります。「心機一転」。字引で引くと、ある事柄に触れて心ががらりと変わる。とあります。子どもを育てる上でもっと考えていただきたいことは、子どもが持っているどんな素晴らしい才能や力は放っておいては出てきません。大きな刺激を与えていくことですが、親をはじめまわりの大人がその感動を噛み砕いて刺激を与えていく(子どもにとれば感動というより感化していく)ことです。 その感化の積重ねにより眠っている力や才能が奮い起こされ、やる気(自信)が出てくると思います。一位になってよかった新記録がでてよかっただけでなく、選手や監督の話す言葉をよく噛み砕いて感動したことを話していくことが大切だと思います。選手がそこまでたどり着いた過程の大切さを強調してほしいものです。その言葉こそ人を育てる源があるように思います。

 子どもを取り巻く大人たちが「日々楽しみ、感動する」ことによって、子どもたちは感化を重ね心が磨かれていくものだと思います。

感動は日々生活の中にたくさんあります。ないのではなくなんとなく見過ごしているのです。数年前に加藤シズ江さん(元衆議院議員多分百歳過ぎていらっしゃると思います。)が黒柳徹子の部屋にゲストとして出演(90何歳のときだったと思いますが定かではありません)されたとき、「私は一日に10回は感動しています・・」と楽しく生き生きとおっしゃったことが心に重く残っています。今からでも遅くはありません四季折々の変化や日常の虫や小鳥のさえずりや風の音などのできごとを五感を通して感じ、心をときめかしたいものです。感じる心が豊かになれば、人生がもっと楽しくなるでしょうね。

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